back number, No.02

2013-09-01
movie meet up vol.02

interview

倉貫 匡弘

東京生まれの三十歳。偶然、日活や角川、東宝の撮影所に近い調布で育った。ごく普通の家庭だった、人見知りの少年時代。祖母が応募を勧めた児童劇団に受かり、小学生のとき、彼の俳優人生は始まった。

倉貫 一人で現場へ行ったりして、楽しかったですね…大人の世界を見れて。いつしか人見知りもなおってました。

小学生で始めた空手は黒帯。高校生でヒップ&ホップ・ダンスをはじめた。

倉貫 実践的な「組手」より、きっちり「型」をやる方が得意なんです。ダンスもそうですが、演じる上で役立つと思って始めました。きっかけはいつもそうです。

中学時代は学園ドラマなどに出演。今では若手俳優の登竜門となった日曜日枠のオーディションに選ばれた。その作品が「未来戦隊タイムレンジャー」。一年間タイムグリーン役で活躍する。そして19歳の春、映画「美しい夏キリシマ」と出合った。

瀬戸 黒木和雄監督の? 倉貫 ええ。映画の現場って独特じゃないですか。今まで感じたことのない感覚がすごくあって。言葉で説明しづらいんですけど。こういう「感覚」になれる。こういう「仕事」ができる。この瞬間、「ホントに俳優を続けよう」と思いました。

香川照之さん、原田芳雄さんの演技が、現場の空気を引っ張っていく様を目の当たりにしたことも大きかった。もっとうまくなりたい…。と目標がみえた。 それからはワークショップに数多く参加し、たくさんの舞台にも出演した。体のキレを生かし、人気SFシリーズの雨宮慶太監督作品「牙狼〈GARO〉」の劇場版「〜RED REQUIEM〜」に続いてセカンドシーズンに出演。そしてスピンオフ映画「牙狼外伝 桃幻の笛」が7月に公開になったばかり。昨年の12月、静岡の山中で撮影された。

瀬戸 この作品の大橋監督は、監督とアクション監督の両方兼任されたんですよね。

倉貫 はい。シリーズのアクションにずっと携わっていた大橋さんの初演出作品でもあります。なのでいつもよりアクションが満載です(笑)寒さの中、殺陣(たて)とイメージ合成満載で、皆で頑張りました。 次の公開作は「太陽からプランチャ」。女子プロレスラーを取材する若者カメラマンの背中を押す先輩役。

倉貫 子役の頃は年上の人に囲まれていましたが、20代半ばの頃から逆に、年下の子と現場で一緒になるようになり、最初は戸惑いました。次第に慣れて、役でも先輩を演じることが多くなってきましたね。 以前よりプレッシャーも増してきているのかも知れない。

今はある意味「迷走中」だと倉貫さんは語った。

倉貫 今までと違って、監督ともちゃんと対等に話ができるようになっていきたい。黒澤明監督の『天国と地獄』での俳優陣のように、とことんキャラクターを突き詰めて滲み出せるようになるには、僕は何を身につけていけばいいのかと考えています。歳を重ねて、余計そう感じるようになりました。バカ正直なだけの自分から、もっと深みある人間になっていきたいです。

彼は真摯に語ってくれた。俳優の仕事には、僕はある種の渇望が必要だと思っている。その飢えが対する人との距離感に感動を生むのだろう。また愛情や魅力、ユーモアもその過程で生まれるのだろう。洞察力や、自分をみる客観性は日常の中で養われる。意識的にそこを見つめ、それを表現として再生していけるかどうかが、基本的に求められる「演じるという行為=役者の仕事」なのだと。倉貫さんの正直な潔癖さは、時に諸刃の刃かもしれないが、焦らず一歩づつ、決して眼差しを伏せず、着実に進んで行くことができたなら、きっとその道は、一歩ずつ昇る階段にかわっていくことだろう―― (文・瀬戸慎吾)

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