back number, No.03

2013-11-01
百花騒鳴

hyakkameisou

 

2、ガライカ

昼過ぎ、編集部内の打ち合わせは、たいてい喫茶ムード。

珈琲専門店のセールで購入したキリマンジャロを、仰々しくカップに注ぎ香ばしい湯気を楽しむ。「ダイエットのために小麦絶ちをする!」といいながら、クッキーの粉を口元から拭う。一通り、かしましいやり取りをして、はじめて本題に入る。

「…という訳で、ガライカの場合は仕方がないけど…」と、ある事の説明をすると、周囲がポカンと口を開けた。

「ガライカって何?静岡弁?」「え~?!いやいや標準語でしょ~」と自信をもってスマホで検索した。静岡、焼津エリアの方言と書かれていた。ガライカ=故意ではない。例えば、うっかりモノを壊して謝る場合に、「ごめんね。ガライカだからね(わざとじゃないからね)」といった具合になる。ちなみに清水エリアでは、「ガライ」という3文字で「わざと」という意味をなすようだ。この場合の謝り方は「ごめんね。ガライじゃないよ(わざとじゃないよ)」となるらしい。

これにはショックを受けた。人生の中で、どれだけの回数ガライカという言葉を、さも標準語でございという顔で発してきた事だろうか。うなだれる私を、他県出身の一人が「あなたの方言は一般的な静岡人に比べて濃い。今さら気にするな」と励ました(?)。このやりきれない思いを、同じ町、同じ時代に育った友人なら分かってくれるのだろう。事の顛末を説明した。彼女から返ってくる共感の言葉を、何の疑いもなく待った。

「何それ~?ガラクタ?」…撃沈。
心の中で、乾いた枯葉が風に吹かれて飛んでいった。 自慢のキリマンジャロで温まるとするか。

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