back number, No.63

2023-11-28
百花騒鳴

62.芋掘り
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日中は汗ばむほど暑い日もあるのに、味覚は季節を進めていく。先の休日は、叔父の家庭菜園でサツマイモ掘りを手伝った。家庭菜園といっても、サツマイモのツルが連なる畝1つを掘り起こしていくのは、そこそこ重労働である。叔父と私が、スコップで土を掘り起こす。土から顔を出したイモを、私の母と娘が抜いていく。水分を含んだ土はずっしりと重く、勢いよくスコップを突き立てないと土中に入って行かない。「よいしょ!」と言って、柄に全体重をかけると、「ザクッ」と瑞々しい音がなった。その瞬間、周囲の空気が止まる。みんなが私を見つめる。視線が痛い。誰かが言った。「やったな」慌てて土をかき分けてみると、美味しそうな薄黄色の断面が現れた。イモはシャープに切断されていた。その後も、慣れていないことを理由に、何度か瑞々しい音を畑に響かせることになった。その度に、「あ」「また」「何個め?」という批判の声を浴びながら作業を続けた。気づけば数十キロのイモが収穫できていた。本日の夕食は、イモの天ぷらだとほくそ笑んでいると、「さ、これを1ヵ月寝かせるぞ」と叔父が言う。熟成させることで、でん粉が糖に変化し甘いイモになるのだと。お手伝いのご褒美は、1ヵ月先へとお預けとなった。

 

今号も最後までお読みいただきまして、今年1年ご愛読いただきまして、誠に感謝申し上げます。

次回は、新たな年にお目に掛かります。来年も皆さまにとって、希望多き年となりますよう、お祈り申し上げます。

編集部一同

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