back number, No.15

2015-11-05
百花騒鳴

百花騒鳴

14、ライン

冬の寒さは嫌いではない。ファッションにおいては、一番購買意欲が増すシーズンである。平成のアラフォー美魔女ではなく、昭和の時代に一時現れたオバタリアンの末裔ではあるが、決してオシャレ心は忘れていない。

ただ残念なことに「素敵、カワイイ、着てみよう」で試着室に向かえる体型でないので、まずはサイズという振るいにかける。ここ、大事。目視で判断し「いけるかな」と思ったら、身体に充てる。鏡に向かって「似合うかしら?」ではなく、身体を覆うだけの十分な幅はあるかのチェックである。それでもハラハラして、「着られるかな? 身体入るかな?」と呟きながら試着室に向かうのである。

そんなオバタリアンが、早く試着したい! と思える一着に、今回のファッション取材で出合ってしまった。モデルさんが着用していたグレーのギャザースカート。ほど良いボリューム感で、裾へ向かってフワリと広がるラインがかわいらしかった。ウエストがゴムであることを確認すると、モデルさんを追いかけ試着室へ。

「ちょっと、履かせて~」

履けた。鏡を見た。ん? 何か違う。あれ? どうした? この違和感はどこからやってくるんだ?しばらく、鏡に映る不格好なオバタリアンと睨みあう。左右に向きを変え、色々な角度から検証した結果、原因が判明。モデルさんの着用時は、腰を頂点としてキレイに広がる三角形のラインだったのに対し、鏡の中のラインは、揚げたての天ぷらチクワのように膨らんだ長方形になっていたのだ。グレーだから、管牛蒡でもいいか。「先が見通せる」縁起のいいラインに見えたところで、静かに私服に着替えた。

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