back number, No.02

2013-09-01
百花騒鳴

hyakkameisou

 

1、テレビのチャンネルはダイヤル式でした

編集部のスタッフは、みな薹(トウ)が立っている。

加齢臭がどうだとか、老眼がどうだとか、仕舞には「前歯を入れ歯に…」なんて話が取材中に飛び交う。ほんの数年前には感じなかった、経年変化が如実に現れるお年ごろなのだ。

とはいえ私は自分の身に起こる変化を、嘆いているわけではない。かなり年上の人とも、共有できる感覚が楽しくもある。昔に体験したことを、子どもたちに話し感心されるのも悪くない。けれど、昔話を共有できると思った相手に、「知りません」と一刀両断されるとつらい。  とあるインタビューの最後に「お茶の間から応援しています」と伝えたら、空気が変わった。あれ、今どき「お茶の間」っていわないな「ブラウン管の向こうから…」いやいや、ブラウン管テレビも、もう見ないぞ。こうなったら思考はストップして、言い換え表現が浮かばない。お茶を濁すように、「昔のテレビは、自分で調整しながら見てたんだよ。Uって書いてあるガチャガチャ音を立てるダイヤルと、くるくる回るダイヤルがあって…キレイに映るように調整するのが、子どもの仕事だったね…」なんて回想してみた。  そうしたら「あ、『三丁目の夕日』で出てきましたよね?」って。

私は、もう少し後の時代の人ですよという言葉を飲み込んだ。きっと相手には、時代の境目が分かっていないだろうから。薹が立つということは、過去という大きな袋へ一括りにされることなのかもしれない。

「薹が立つ」って言葉も…最近聞かないな。

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