back number, No.09
2014-12-01
百花騒鳴
8、表に出すべからず
「すべるように泳ぐ白鳥も、水面下では必死に足をバタつかせている」など、見えている表の部分と、裏方とのギャップを表現することがある。
弊誌を白鳥に例えるとは、誠におこがましいことではあるが、裏側は実にドタバタしている。今回の旅特集で鹿児島を訪ねたときのこと。宿の取材で、露天風呂を撮影する機会があった。デザイナーが設計したという浴場で、浸かる人にとっては素敵な浴槽なのだが、いざレンズに納めるとなると、なかなか難しい。あれやこれや悩んだ結果、実際に風呂に入りながら撮影することにした。撮影担当のRは、裸になり首からカメラのストラップを下げている。コミカルでもありセクシーでもある。私も、負けじと裸になり、ひらりひらり舞う落ち葉を片づける係りとなった。レンズの前を、手ぬぐい下げた布袋腹が、必死で落ち葉を追う様子は、Rのシャッターを切る手に影響を与えた。「面白いカッコで、前を通らないで。手ブレしちゃう」「え?こんなに一生懸命、場所を整えているのに~」なんて、自分の無様な姿を知らない私は、それでも尚、レンズの前をうろついていた。
なんとか撮影を終え、次の取材先へ。準備のためデータチェックを始めたRが、突然笑い出した。モニターを見ながら、涙を流し腹を抱えている。そこに写しだされたのは、手ぬぐいをさげ、とぼけた表情のフルヌードおばさん。腹部のブレ具合が、贅肉の激しい揺れを物語る。誰からも喜ばれない一枚がうっかり記録されていた。
私の鹿児島の思い出を記録した、唯一のカットである。


