back number, No.57

2022-11-14
百花騒鳴

  1.  陶芸

hyakkameisou

「芸術の秋」というフレーズに刺激された我が家は、家族揃って初の陶芸体験にチャレンジした。誰一人、芸術的センスを持ち合わせていないため、土を練る所から、既に動作がおぼつかない。先生も、とんだ生徒たちがやってきたと思ったことだろう。作業中、先生は何度も「困ったことがあったら、直ぐに声を掛けてくださいね。助けにいきますよ」と言う。「はーい」と返事だけは優秀な我々は、師の言葉の真意を理解せず、勝手に手を進める。その結果、娘の茶碗は底に穴があいた。直ぐに先生の助けが入る。娘の茶碗の手直しに、先生が苦戦している間に、今度は私の茶碗がびろ~んと外に広がった。「あら大変、お花が咲いてしまいましたね」と先生。先生が、忙しく私と娘の間を行き来する。我関せずとばかり、部屋のすみで作業に没頭しているのは、一番不器用な母。母は、丸い平皿を作っていた。先生が丸く整えてくれた粘度を、均等に伸ばしていくだけ。一番簡単な作業だと言われた……はずだった。しかし、みんなが目を離している間に、深刻な事態となっていた。さっきまで丸かった粘度は、マンボウの出来損ないのようないびつな形状で、ぺろんぺろんに薄くなっていた。「夢中で伸ばしていたら、こんなになっちゃって……」夢中になるにしても限度があるだろう。薄いにもほどがある。これには先生も「あら、まあ、ね~、フフフ」と言葉がない。どうかは皿に見えるくらいまでに修正してもらい、我々の粘度遊び、もとい芸術は完成となった。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。今年も一年、ご愛読いただきましてありがとうございました。来る年が、皆さまにとって健やかな一年でありますようにお祈り申し上げます。新年にお会い致しましょう。

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