back number, No.58
2023-02-10
百花騒鳴
57. 三保の潮騒
表紙画像の撮影は、早朝の三保海岸で行った。我が家の犬たちは、まだ夜も明けやらぬうちに車に乗せられた。乗車した時は寝ぼけまなこだったのに、駐車場に着くと、初めて訪れた場所に大興奮。
「どこ?ここ、どこ?」
尻尾はちぎれそうなほど、大きく激しく振っている。松林の向こうから聞こえる潮騒に向かって歩きだした。力強くグイグイと進んでいく。しばらくすると、海が視界に入ってきた。「なんだ、あれ?何?何?何?」
彼らの好奇心を存分に刺激する。DNAが騒ぐのであろうか?彼らは、カナダのニューファンドランド島原産で、水難救助犬として活躍しているニューファンドランド犬の子犬だ。大きな水溜まりを見つめると、何かのスイッチが入ったかのように一目散に向かっていった。石や流木が転がる砂浜を、息を弾ませ小走り。しかし、打ち寄せる激しい波を前に急ブレーキ。見たことのない動きをする水に、動揺を隠せない。右から左から注意深く観察すると、オスのリョウは波に喧嘩を仕掛けることに決めた。
「かかってこい!お!逃げるのか?なんだ、やるのか?」腕をちょいちょいと揚げながら、かまってもらおうと必死になっている。このやり取りは、なかなか終わりそうもないと思えたのだが、あっさりと勝敗が決まった。稀にやってくる大きな波をザパーンと被り、海からお灸を据えられた。自然のパワーに圧倒されて、彼は肩を落とした。それを、メスのセンが紙のように細めた目で、少し高い所から見下ろしていた。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。次回は、木蓮の花の咲く頃にお会いいたしましょう。