back number, No.21

2016-12-05
百花騒鳴

百花騒鳴

20、炎

季節的なこともあり、今回は「炎」にまつわる取材撮影が重なった。「星のや 富士」では、施設の象徴である焚き火ラウンジで、四十過ぎのおばさんたちが無邪気な時を過ごした。焼マシュマロを作り、キャッキャとはしゃいだ。「ファイヤーライフ静岡」では、計算された炎の美しさに魅了された。火を見たさに、そんなに寒くもない日中、たくさん薪をくべてもらった。人柄のいい桜井社長に甘えて、何度も薪のおかわり。カメラのRには、「ちょっと、目がイッちゃってるよ!」と注意を受ける始末。私は、「炎が好き」である。あ、誤解なきように…

私と炎の親密な関係は、幼少から始まる。大人たちが吹かすタバコに憧れていた不良幼稚園児は、ある時良からぬことを閃いた。お絵描き帳をビリっと破ると、小さくクルクル丸めた。そして口にくわえ、ライターで火を着けた。ゆっくりと燻ぶる炎を想像していたおバカ園児。優雅に「プハ~」と一服を期待したが、炎はメラメラと一気に燃え上がった。
「熱ッ、わわわわわ」
大慌てで、煤になった紙を払いのけた。「おお、驚いたぜ! 危うく火事になるところだった。また母ちゃんにお仕置きされるところだったぜ」と肝を冷やした。

だが、喜悲劇はこれで終わりではなかった。燃えカスを捨て、証拠隠滅を図ったのだが、気づくと細かなカスが自分の周りに広がっている。せっせと集めて捨てる。「よし! 完璧」と思うと、また落ちる。こりゃなんだ? と周囲を見渡す。すると、カスはふわりふわりと頭上より振ってきた。いよいよ訳が分からない。あれ? あれ? と慌てているうちに、母がやってきた。
「あんた、その頭どうしたの? 前髪燃えちゃったの?」
カスは、燃えた前髪だった。

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