back number, No.21

2016-12-05
イタリアを慕う二人が紡ぐ 一途な料理

castagno

イル・カスターニョ

少しだけ静岡市の中心地を外れたところに店を構えるイタリア料理店「イル・カスターニョ」は、開業からもうすぐ12年になる。町の人に愛されるレストランであるために、オーナー夫妻は、ゲスト、素材、料理、ワインと正直に向き合い、店づくりを丁寧に続けている。ご主人のシェフ稲見謙司さんは、地元の農家から直接野菜を仕入れ、漁港にも足を運ぶ。生産者や船主など、素材の一番近い場所にいる人たちと、色々な話をしては調理法、メニュー構成に生かす。ソムリエールである由香夫人は、謙司さんが繰り出した料理、キッチンでの様子を察し、最適なワインを見立てる。また店で供されるドルチェ、ビスコッティ、パンも、彼女がイタリアの郷土料理本などからヒントを得て作る。

二人は数年に一度、謙司さんが4年間修行を重ねたイタリアを訪ねる。長期休暇で日ごろの労を労いながら、自分たちの原点を再確認する旅だ。多様な特色を持つ国土から、訪ね歩くエリアを限定し、ハムやチーズなど食材の生産者を訪問する。また地元の人で賑わう食堂に身を置き、教会や街並みなどを見聞しては、自分たちの求める店づくりの手がかりを集める。

謙司さんは、「イタリア人にとって、レストランで時を過ごすことは、出かける前の服選びから始まる。そして店の人とゆっくり語らいながらワインを選び、料理が出て来るまで、会話をしながらくつろぐ。その様子を見て、美味しいものを仲間や店の人と共有するって、とても贅沢な一時だと感じた。当店でも、お客様にとって日常を彩る幸せな時間を提供できたら…」とまっすぐな瞳で語った。

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