No.08
2014-09-30
繊細な仕事で、 味の輪郭を引き立てる
旬菜処 いなば
新静岡セノバのターミナル付近に、間口の小さな料理店がある。こじんまりとした玄関を上がると、無垢木のカウンターの中で仕事をする親方、稲葉光由さんが見える。ここは、稲葉さんが数店の日本料理店で研鑽を重ねた後、9年前にオープンした「旬彩処いなば」。基本に忠実でありながら、食材の新しい可能性を求め、様々なカタチで日本料理を表現している。コースのはじめに登場する前菜は、稲葉さんの世界観を集約したもの。一枚の皿の上に、小さくても一品ずつ手を抜かず、心を入れた料理が幾つも並ぶ。色彩も鮮やかで、目と舌を刺激され、食欲と期待がじわじわと高まっていく。
これから寒くなる季節に、リピーターからのオーダーが増えるのは、質のいい脂がのった「すっぽんコース」。今まで「苦手だった」という人が、こぞってオーダーするという。その理由は、前菜の姿勢にも通じる丁寧な仕事。食べる時間に合わせ、活きのすっぽんをおろし、下処理に注意を払い、細かなところにまで気を配る。そうすることで、雑味が消え、旨みの輪郭が浮かびあがる。滋養強壮といった強固なイメージではなく、繊細な味を持つ食材としてのすっぽんを味わうことができる。シンプルな調味料で仕上げた鍋は、とくに絶品。
基本的にメニューはコースのみだが、予算やリクエストに応じて柔軟に対応してくれる。常連になると好みや量を把握してくれ、自分用にカスタマイズしてくれた料理を楽しむことも可能。また一つ、馴染みの店が生まれそうだ。
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