No.08
2014-09-22
百花騒鳴
7、コミカルな思いやり
今回旅した山梨は、風光明媚な場所が多く、お気に入りの県の一つである。一昨年は、友人3人と、甲州市を代表する日本百名山の一つ、大菩薩嶺に登った。
オシャレな山ガールと行きたいところだったが、体の成長に洋服が間に合わっていない私は、しゃがんでも背中が出ないシャツ、ウエストの苦しくないゴムスカート、はけるタイツなど、「着られる」を重視した結果、南国の鳥のような激しい色合いになってしまった。友人Aは、紺色のパーカーにネルシャツという、父親から借りた年期の入った渋い洋服に、レッグウォーマーをプラスした不思議ないでたち。友人Bは山歴が一番短いのに、サポートタイツをしっかりとはいた気合いの入った服装。何ともまとまりのない集団が、なだらかで眺めのいい稜線を進んでいった。
山頂でランチをすることにした一行。私が自家製のサンドイッチを広げる横で、Aはでん六豆をポリポリとかじりだした。誤解がないようにいっておこう、Aは30代の独身女性だ。Bは、コンロを出し、チーズリゾットを調理している。しばらくすると、チーズのいい香りが辺りに漂い出した。そんな時である。突然風が吹いた。チーズリゾットの鍋が、宙に舞ったのでる。カランと軽い音を立て、中身をぶちまけた。片づけながらも、中身を気にするB。無常にも、半分以上を失った。アリが小さな米粒を高々と掲げ、誇らしげに歩いていく。
Aは「アリさんも、嬉しそうだ」とポツリと呟くと、でん六豆をつまみ、Bの手の平に置いた。思いやりがコミカルな風景に見えたのは、いでたちと豆が要因だったのだろうか。
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