back number, No.14

2015-09-01
百花騒鳴

百花騒鳴

13、秋の森にひそむ者

妖怪なるものを、見たことがあるだろうか?
笑う人も多いだろうが、私は「ある」と答えよう。私がというよりも、一族そんな体質なのである。もっといえば、近所のおいちゃん、おばちゃんたちも、そうである。だから不思議で滑稽な話は日常茶飯事だ。

あるとき、娘が叔父と犬の散歩に出かけた。川原を歩き水辺まで来ると、川面に向かって犬が吠えはじめたという。娘が犬の吠える方向に目をやると、水中に長い手足が見え、すーいすーいと対岸へと進んでいく。驚いて叔父に「何あれ!」と聞くと、慌てる様子もなく「あー、カッパだなぁ」と答えたという。

またあるとき、私が友人と清水の山道をドライブしていたときのこと。大きくカーブを曲がりながら、急傾斜を上る場面があった。車はゆっくりと進むから、周囲の様子が良く分かる。そのとき、草の間からグレーの物体がビヨーンと伸び上がってくるのが見えた。タヌキだ。いや違う。身長は100㎝くらいあり直立している。肌はツルッとした印象。出来損ないのミッキーのように、それなりに大きな耳が頭頂部に付いている。「ありゃなんだ? 見て、見て」と指差しながら、叫んだ。友人が振り返ると、その物体はゆっくりと縮んでいった。うちでは、ムジナであろうと結論に至った。

過去の経験から、もの悲しさの漂う秋の山は、妖怪たちと出合う確率が高い。栗拾いやキノコ狩り、山に分け入るときは、耳をすまし目をこらしてみよう。森の住人たちの気配を感じられるかもしれない。

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