back number, No.12

2015-05-01
百花騒鳴

百花騒鳴

11、春の涙

春雷、春の嵐と聞くと、桜吹雪が舞い散る…どこか儚げで可憐なイメージをもっているのだが、実際はそうでもない。下田の旅で、この嵐と格闘することとなった。まずは初日、朝からザーザー降り。静岡と下田では天気が違うという淡い期待をもって出発。車のフロントを滝のように雨が流れていく。天城の山は、白く濃い霧まで立ち込めている。なんだか怖い。それでも走る。静岡を出てから3時間、漸く下田の街に到着。降っている。かなり降っている。むしろ酷くなっている。いい景色を撮影したいのだが、無理だ。助手席のカメラマンRが、悲し気に笑う。来た道をまた3時間かけて帰ることとなった。
数日をあけ、再度トライ。雲は怪しい雰囲気だが、雨は降っていない。大いなる期待を抱き、いざ下田へ。現地はいい感じ。日暮れまで天気は持ってくれそうだ。じゃんじゃん取材しようと張り切った。だが、アクシデントは突然やってきた。干物店の小木曽さんで取材を終えたときのこと。Rが蚊の鳴くような声でつぶやいた。

「カメラがイカれた」

は? いやいやいや、ちょと待ってちょっとぉ待って…あまりの衝撃に、流行りの台詞を口ずさみそうになる。このタイミングで? 3時間もかけて来たのに? 天気いいのに? カメラのカスタマーズセンターに問い合わせても、解決せず、無念。

三度目の挑戦。カメラも別機を用意、天気も上々。本日は海岸沿いを中心に取材だ。もうナビがなくても、目的地へ辿りつけるようになっていた。車を降りた。次の瞬間、何かに車へ押し戻された。なんだ? もう一度、出る。今度は髪が逆立った。風だ。しかもかなりの強風だ。海上の天気が荒れるって予報で言っていた。それだ。でももう後がない。潮風に吹かれ、波しぶきを浴びながら、あわや海へ転落という危機を乗り越えて、取材完了。

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