back number, No.22

2017-01-05
百花騒鳴

百花騒鳴

21、陰陽

縁起の良いテーマで始まった新年号。自然と導かれるように、ご縁のある方々と出会い、楽しい仕事をさせて頂いた。明るく神々しいスポットばかりで、身を清めてもらい、幸せな気分に浸れた。けれど、物事には陰と陽、光と影がある。バランスである。取材先で素敵な思いをした分、編集部のみでの撮影でこれまでにない怖い体験もした。

焚き火のほっこりとしたシーンを撮影しようと、とある場所まで出かけた。ロケハンを行った時間は、まだ明るかったが、本番撮影のころになると足元さえ見えないほど真っ暗になっていた。周囲に灯りは何もない。星が無数に輝くキレイな夜空だった。車の駐車位置から撮影ポイントまでは携帯のライトを照らしながら進んだ。

車から50mほど離れたところに、我々はいる。カメラを固定し、カメラマンRと私が立つ、その5mほど先にモデルが腰を下ろしている。さらにその先には川が流れ、対岸は切り立った崖になっていた。

我われ以外は、誰もいない。川のせせらぎだけが、闇から聞こえる。準備が整い、いざ撮影となったところで、あり得ない音が聞こえた。「とぷん」と川に何かが入る音だ。いやいや、あり得ない。誰もいないのに、結構な重量を感じる水音だ。その後も、「とぷん、とぷん…」と音は徐々にこちらに近づいてくるようだ。いよいよ怖くなった3人は撮影どころではない。無言のまま撤収の合図を出し合うと、平静を装い大きな声で高笑い、心は車へ猛ダッシュ! タイヤが空転するような勢いで、その場を離れた。車内でも口にすることを憚っていたが、事務所に戻るや否や「お塩! お塩! お塩」と全員がお清めの塩を求めて駆けだした。その後確認した画像には、モデルを守るように七色の光が覆っていた。

Posted in back number, No.22 | Comments Closed