最新号
2025-03-20
No.70 バッグ
百花騒鳴
いつも一緒にショッピングに出掛ける、幼馴染たちがいる。集まると、とにかくかしましい。
デパートのフロア中に、笑い声が響き渡ってしまうのではないと思うほど。その笑い声の原因の一つに、N美の言い間違いがある。ある春の日のショッピングで「卒業式や入学式に使えるフォーマルなバッグが欲しい」という話題になった。早速バッグ売り場に到着すると、N美は自信たっぷりに「ワンハンドレッドのバッグありますか?」と尋ねた。
店員さんは、「は?ワンハンドレッドでございますか?」とかなり戸惑った様子。きっと、頭の中はパニックだ。100?100円バッグ?しばらく、頭の周りを「?」が飛び交っているような表情をしていた店員さんだったが、急に閃いたらしく「ぁ、ワンハンドルのバッグでございますね」と笑顔を浮かべた。「そー、そー!」と臆することなく返事をするN美。私たちは笑いを堪えることができなかった。その後、何年経っても「ワンハンドル」を「ワンハンドレッド」と言ってしまう。その度に、私たちがニヤリとするので、近ごろは桁が変わり、ただ「ワン」と言うようになってしまった。この春は、彼女が見たててくれた、「ワンバッグ」で、娘の式に出席しようと思う。
今号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、温かな土から筍が顔を出す頃に、お会いいたしましょう。
Posted in 最新号 | Comments Closed