最新号
2024-11-25
68.ホーホー鳥
百花騒鳴
私の実家は、山が近い。少し情緒的に言い換えれば、里山の中にある。昼間は、車の音、人の声、生活音が聞こえるが、日が暮れると途端に静かになる。変わって、聞こえてくるのが自然の音。夏の夜は、キョキョキョキョキョとホトトギスが鳴き、秋の夜はコオロギ、クツワムシが騒がしい。ただ、冬の夜は少し様子が変わる。ビューと建物を吹き抜ける風の音、隙間風の通る我が家の扉が揺れる音が、寒々しい雰囲気を醸す。そこに、一層のわびしさを加えるのが、山の中から聞こえてくるホーホーという鳥の声である。この声が聞こえてくると、しーんと空気が冷え込み、光害の少ない夜空に多くの星が輝きだす。子ども頃、姿を見せない不思議な声の主について母に訪ねたことがある。すると、母は
「あれはね、ホーホー鳥だよ。昔、ジイジがそう言っていた」
と教えてくれた。どんな鳥なのかと聞くと、詳しくは知らないようだった。インターネットもない時代だから、検索して正体を探ることもできなかった。時が過ぎ、私もとうに成人した頃の出来事である。ある日の夕暮れ、母と私、お隣に住むおじいさんと外で立ち話をしていた。すると、例のホーホーという声が聞こえてきた。私と母は揃って、
「あ、ホーホー鳥が鳴いたね」と。すると、隣のおじいさんがこう答える。
「あー、あれはフクロウだ~」
「えー!あれ、フクロウの声だったの?」
二人は声を揃えて、目を丸くした。いい年の母子が、無知を晒し、長年の誤認識を訂正することになった。そして、母子はこうも思った。「ジイジよ、いい加減な情報を継承させたな!」と。
今回も最後までお読みいただき、また、今年一年お付き合いいただき、ありがとうございました。
次回は新春にお会いいたしましょう。
来る年が、皆さまにとって、温かく素敵な年でありますよう、お祈り申し上げます。