back number, No.65
2024-03-24
64 渇望
64 渇望
「春」という言葉を耳にすると、無性にどこかへ出掛けたくなる。
「春スキーもいいよね~」「行きたいねー」なんて友人と語り合っていた時である。友人があるサイトを見つけて、こう言った。
「カネのナるゲレンデだって」
それを耳にした私は、食い気味に応えた。
「行くでしょ!そこ!」
「なんで?そんなに行きたいの?タダ カネがナるんだよ」
私は熱っぽく続ける
「ただで金が成るんでしょ。行かない理由がないでしょ」
呆れた友人は冷静に訂正した。
「鐘が鳴るんです」
潜在的な欲望は不意に露呈するものである。私の渇望が、ある種の同音異義語を生んでいたようだ。「なんだ~」と苦笑いしながら、急速にそのゲレンデへの興味が失われていくのであった。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回は、風薫る五月にお会い致しましょう。