back number, No.68

2024-10-01
No.68 あざとい

百花騒鳴

hyakkameisou

賢くて、抜け目のない様子を「あざとい」と表現されることがある。主に女性に対して使われるが、それは人間だけに留まらないと思う。我が家の牝犬、セレンも確実にあざとい。彼女は、50㎏ほどある超大型犬であるが、我が家にはもう一回り大きな牡犬、リョウがいる。日ごろから仲は良いのだが、互いに譲らない場面では体格の良いリョウに押されてしまう。庭で遊ぶ時、喉が渇くと蛇口から直接水を飲みたがるが、必ずリョウが先に口にする。それを、セレンは静かに隣で待つ……なんて事はしない。水道から少し離れた門扉に向かって走りだし、あたかも誰か見知らぬ人が訪ねてきたかのように、警戒の声を上げる。すると、水を飲んでいる彼は、

「なんだ。なんだ。誰か来たのか?」

と慌てて門扉の警護に向かう。その姿を見送ると、シメシメという顔をしながら優雅に水道に向かうのである。小芝居にすっかり騙された男子が門扉をうろついている間に、彼女はゆっくりと新鮮な水を味わう。こんな事は日常茶飯事で、いつでも体格では敵わないリョウを知恵で出し抜き、従える。まるで、彼氏を上手に手玉にとるあざとい彼女といった雰囲気だ。そんなずる賢さを知っていながら、飼主の我々も「く~!可愛いぜ!」と言って、つい甘やかしてしまう。我が家では、彼女は無敵である。

 

今号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。11月4日には、オクシズでイベントを開催いたします。皆さまのお越しを編集部一同お待ちしております。

それでは、立冬のオクシズと次回の百花壇でお会いいたしましょう。

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