back number, No.55

2022-07-21
百花騒鳴

54. トレーナー

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我が家に、超大型犬であるニューファンドランド犬の子犬がやってきた。生後3ヵ月の彼は、真っ黒なパピーコートが柔らかくモフモフで愛らしい。幅広い胴のわりに手足が短く、ずんぐりとした体型で、体重は20キロ近くもある。全身真っ黒で、首に白いマークを付けているから、まるでツキノワグマの子熊のようだ。鋭い乳歯で甘噛み……いや、本気噛みをしてくるから、行動も子熊そのもの。それでも、家族にとっては、ただただ愛らしい。帰宅すると門扉まで出迎えに来てくれるから、もうメロメロになってしまう。「ただいま~」と彼にすり寄ると、「掛ったな!」と言わんばかりにジャレついて、髪の毛をガブガブ噛まれるのである。「痛い!コラ!ダメ!」なんていいながら、しっかりと語尾にハートが付いている。家族みんなが、ヤンチャな彼に振り回される幸せな日々を送っている。そんな彼は、朝も早い。夜も明けやらぬ時から、オモチャを振り回し、庭を駆けまわる。我が家には、起床が早い者がもう一人いる。我が母である。いつまでも元気なアクティブシニアでありたいという理由から、朝早く庭でルーティーンの運動を続けている。そんな1人と1匹は、図らずもコラボな行動を見せる。母が後ろ向きで歩く運動を始めると、彼は音のなるオモチャを加えて「ピピピッ、ピピピッ、ピッピピピ」とリズミカルに音を立てる。その音に合わせるように母が歩く。「なんだか、音に合わせて歩いちゃうの」と母は苦笑いしながら、毎日愛犬にトレーニングされている。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。これから夏本番です、お身体にご自愛し、健やかにお過ごしください。次回は、少し涼しげな風に七草が揺れる秋、お会い致しましょう。

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