back number, No.53

2022-03-10
百花騒鳴

庭師

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我が家の庭には、以前塀に沿うように庭木が植えられていた。ツゲをはじめ、山ぶどう、ミカンなど、数十本の木々が四季の訪れを教えてくれていた。そこへ、ある時、頼んでもいない庭師がやってきた。黙って静かに庭のすみで仕事を始める。重機も道具も持たず、前脚と牙だけで、「カリカリカリ、ザザザザ、ワン」そう、庭師の正体は、うちの駄犬だ。あっという間に、1本丸ごと引っこ抜いてしまった。自分の身丈よりも大きな木を、誇らしげに加えて、庭を闊歩する。リビングから見守る私たちに目をやると、「どうだ!」と言いたげなドヤ顔で通り過ぎていく。「コレ!ダメよ~」なんて、母が声を掛けるが、語尾にハートが付いている。そんな甘い声で叱っても、効くはずがない。仕事熱心な庭師は、1日で庭中の木をほとんど抜いてしまった。何が面白いのか。それからというもの、どんな花や木を植えようが、キレイに剪定してくれるようになった。植えても、植えても、丸裸にされるから、誰も庭に何も植えなくないった。この頃では、手入れする木もないため、転職を決めたようだ。「ココ掘れ。ワンワン」と言わんばかりに、何かの管が現れるほどボーリングを続けている。

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回、若葉のみずみずしい季節にお会いいたしましょう。

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