back number, No.74

2026-02-15
百花騒鳴

73.春眠

百花騒鳴

寒さの残る朝は、ぬくぬくとした布団から出たくない。なんなら起きたくない。お気に入りの寝具に包まれて至極の時間を堪能していると、突然、窓の外から大きな声が響いた。「お~はよぉ~、ごさいまぁ~すッ。お~はよぉ~、ごさいまぁ~すッ。」と、外国人男性と思われる声の主は、クセのあるイントネーションで朝の挨拶を何度も繰り返す。アラームのように繰り返され、次第に私も目覚めていく。意識がハッキリしたところで、悟った。これは、男性の声なんかではない。近くで住宅の建築が行われている。大工さんが、トリマーか丸ノコを使っている機械音だ。「ウィ~ン、ズザ~ッザ~ズ~」が「お~はよぉ~、ごさいまぁ~すッ」と聞こえていただけだった。その音は、翌朝も眠りから覚めない私に語り掛けてきた。「ブブブブッシュにマラカ~ス。ブブブブッシュにマラカ~ス」「小骨が多い~。こ、こぼね~」と脈絡のない文節となって、私の耳を、脳を襲う。この悪意なき襲来は、しばらくの間、私の春眠を妨げることとなった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

青空デパート「百花店」にて、皆様のご来場をお待ちしております。

 

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