back number, No.60
2023-05-18
百花騒鳴
59. 母の愛
ある時、わが母は臀部に違和感を抱いた。デリケートな場所ゆえに、医療機関で受診することをためらっていた。しかし、自分の体に何が起こっているか確認したい。鏡で見てみようと、あれやこれやと体勢を変え試みるものの、思うように局部を見ることができない。そこで、母は一計を案じた。彼女の母(私の祖母)に、様子を見てもらうことにした。「お母ちゃん、ちょっとお尻見て」というと、おもむろに下着を下ろし四つん這いになった。祖母は、「どれ?」と母の臀部を覗き込んだ。その瞬間に、プーと一発お見舞いしたのである。祖母の前髪が、風圧でふわりと揺れる。一部始終を見ていた私にとっては、驚きと笑いが止まらない。一方、被害者の祖母は嫌がるわけでも、慌てるわけでもない。一言だけ静かに「これ~」と言うと、そのまま娘の臀部を見つめていた。当時、母も祖母も、「いい歳」であったが、親子の関係に年齢は関係ないのだと知った。我が子はいくつになっても、「可愛い幼い頃のまま」なのだと。私も、成人を過ぎた娘を持つ母となり、祖母の気持ちが分かる気がするが、放屁砲だけは遠慮願いたい。
今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、花火の音の聞こえる夏季にお会い致しましょう。