back number, No.29

2018-03-09
百花騒鳴

百花騒鳴

28. 白シャツ

卒業証書の筒を片手に、少し誇らしげに歩く学生たちを見る季節。オバサンだって、センチメンタルな気分になるもの。昔々の高校生活を思い出したりもする。昨日の夕飯をすぐには思い出せないが、昔の記憶は、美化というフィルターを通して鮮明に蘇る。

ある日の教室での出来事。後ろに座る友人が、私の襟の後ろを触りだした。驚いて「何?」と聞くと、

「あんたのブラウス、ユニークなデザインなんだね~」と応える。

当時通っていた高校は、推奨のブラウスがあるものの、白いシャツであればおおよそ許されていた。私も周囲に倣って、お気に入りのブランドのシャツを親にせがんで買ってもらっていた。けれど、驚かれるような突飛なものではないはずだ。

「どういうこと?」と私。

「だって、タグが後ろ側に縫い付けてあるよ。ブランドのマークが首に付いてるって、オシャレだな~と思って…」

一瞬、彼女の言うことが理解できなかった。そんな不思議なブラウスは、持っていない。彼女が触っていた襟を、自分でのなぞってみた。それは…内側にあるべきタグだったのである。

お気づきかも知れないが、私のその朝、裏返しのままシャツ着て、何の違和感も持たず、全てのボタンと留め、ご丁寧にネクタイまでして、登校したというわけだ。

あれから、うん十年。今では、ショーツが裏返っていても気づかずに、一日を終えることがある。

 

今回も最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。

次号、皆様のおかげで迎える5周年記念30号でお会い致しましょう。

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