back number, No.49

2021-07-23
百花騒鳴

hyakkameisou

48.入院

街の病院で「おそらくヘルニア」と診断された。その翌朝、左半身の激痛で起き上がることのできなくなった私は、救急車で総合病院へ運ばれた。ストレッチャーで、慌ただしく院内に連れられていく。付き添う看護師さんが、「お名前言えますか~。ここどこか分かりますか~」と、まるでドラマのように緊迫した口調で話しかける。えー、えー、意識は非常にハッキリしていますからね、恥ずかしながら状況把握はできていますよ……と思いながら、質問に答える。そこへ担当する医師がやってきて、ひとしきり問診、触診した後、MRIへ。これが、一つの難所であった。腰の画像を撮影するために仰向けにされた。この体勢になった途端に、唸るほどの激痛が走る。「ムリ。ムリ。ムリ…」と叫んでも無情に耳栓をされ「いってらっしゃい」と釜の中に送られる。痛みで涙が止まらない。どうにか気を紛らわせたい。筒内に響く機械音のリズムに合わせ、「痛っい。痛っい。痛っい。ム~リ。ム~リ。ム~リ」と読経のように呟き続けた。この声は、マイクで拾われていたようで「はい。後5分で終わるからね~、頑張って~」とスピーカーから乾いた声が返ってきた。ようやく撮影が終わり救急外来に戻されると、待ち受けた医師から「うん!かなり派手にヘルニア出ちゃってるね!」と診断をされ、更なる苦痛の待ち受ける治療の場へと、また運ばれていくのだった。

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

次回は、東京2020大会が終了する9月半ばを予定しています。

それでは、吾亦紅の揺れる季節にお会いいたしましょう。

 

Posted in back number, No.49 | Comments Closed