back number, No.38

2019-09-08
百花騒鳴

百花騒鳴

37 錯覚

馬と共に育てられた牛が、自分も馬だと思い込み乗馬競技を誇らしげにやってのける姿をテレビで見た。自身を客観視しない動物は、なんともコミカルだと思った。
先日、女性専用のパーソナルジム「シェイプス」の取材でこと。トレーナー、弊誌カメラマンR、私の目に映る女性は全てスタイル抜群だった。その事をあまり意識せず、取材に没頭していたが、何の気なしに、室内に張られている大きな鏡に視線を移した。鏡は二面の壁にL字に張られている。その角に、私が映っていた。鏡の角である、何の効果か随分とワイドに映って見える。「やだ、なんか歪んでる~」と心の中でつぶやき、位置を変えてみた。あれ?角にいた時と、そんなに幅が変わらない。「おかしいな、この鏡」と何度も位置を変えるが、鏡の中の私はワイドのまま。他の人はどうなっているのだろうと、見比べてみた。彼女たちは、リアルも鏡に映る姿も変わらず美しい。
人間も恐ろしいものである。先ほどまで、美しいプロポーションに囲まれていたせいで、本来の自分を見失っていたのだ。自分も同じようにナイスプロポーションと、無意識に錯覚していたようだ。馬の中に混じる牛は、私であった。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は、ひんやりとした風が頬を撫でる秋にお会いしましょう。

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