No.35, 最新号

2019-03-12
皿をたたえるは、渾身という隠し味

一歩01

味楽 一歩

JR静岡駅の南側、静かな通りに灯りをともすのは、食通たちが通う店「一歩」。夕方のオープンに向け、早い時間から親方、金澤さんの仕込みは始まる。「とにかく凝り性」という金澤さんは、独学で様々な調理法を探求し、高い技術を身に着けてきた。そのこだわりと独自性は、先附の小鉢からも容易に伺える。例えば、春の香りがのぼる松前漬けは、それぞれ丁寧に下処理を施した食材が絶妙に調和する。ノビルの辛味、サワラの旨み、ツブ貝の甘みと食感、サクラマスの上品な脂が、五味を感じさせるとともに、異なる素材が生む一体感を楽しませてくれる。

一見、和食の代表的献立とも思える擦り流しは、食して驚く人が多いことだろう。コクのあるタラの白子と合わせるため、新玉ネギとカブを滑らかにすりおろしクリームを少量効かせている。シチューのようにマイルドでクリーミー。野菜のコクと旨み、出汁の風味が優しく後から追いかけてくる。

また春の食材として、常連たちが待ち望んでいるのは、網走から届くキンキの煮付け。肥えた身に上質な脂をたたえている。これをふっくらと、トロ~り甘めに煮付けている。白米にも、日本酒にも、良く合う。

どれを食しても感嘆のため息が漏れそうな料理は、アラカルトで楽しむことができる。コースは5,000円から用意可能。

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