back number, No.44

2020-09-08
百花騒鳴

百花騒鳴

43.プチガトー

鹿の鳴く富士山麓の森の中で、ジビエディナーを楽しんでいた。星のや富士の豪華な夕食だ。フォトグラファーのHちゃんも私も、ワインをいただきほろ酔い状態。そこに、食事を締めくくるプチガトーが登場した。サーブの女性は、「マカロンとギモーヴです」と言い皿をテーブルの中央に置いた。どちらも上品な味わいで、コース料理の満足度をさらに高めてくれる。香りのいいコーヒーと共に、その余韻を楽しんでいた。すると、Hちゃんは「これ、何でしたっけ?もっちりとして美味しい!ぎもぶ?」と聞いてきた。女性と私は、声を揃えて「ギモーヴ」と答える。今度は、「どんな字を書くんですか?」と聞いてきた。聞かれた二人は「???」である。カタカナで答えるべきか、綴りを調べて伝えるべきか……返答に困っていると、「お麩の仲間ですか?お麩みたいだけど、お麩じゃないから、擬模麩って書くとか?」どうやら、Hちゃん、ギモーヴを生麩でできた菓子と勘違いをしていたらしい。フランス菓子だと伝えると、「漢字で書ける菓子だと思った~」と大爆笑。その後も、酔いが手伝って妄想の擬模麩談が、夜更けの森に響くこととなった。

今号も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回は、山々が紅く色づく11月にお会いいたしましょう。

 

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