back number, No.36

2019-05-13
百花騒鳴

百花騒鳴

35 インナー

この春、娘は大学生になった。キャンパスは、オシャレに身を包むイマドキ女子で溢れている。その中において、娘の芋臭さが目立ってしまわないかと、母は危惧した。当人も少しは気にしているようなので、通学用の服を買い出しに出掛けた。
「このスカート可愛いね」「トップスは何が合うかしら」なんて、はしゃぎながら服を選ぶ。気になるものを数点抱えて、試着室へ。何だか、一般的な女子大学生のようだ。
これまで、色気もオシャレに対する欲もなかった娘。少しは女性らしく成長したかと思い、微笑ましく感じた…のは、彼女が自身の上着をおもむろに脱ぐまでの束の間である。この後、私は言葉を失った。上着の下には、なんと高校名と名前が刻まれた体育着を着ていたのだ。
目をまん丸くしている私に向かい、娘は言った。
「速乾性、保温性に優れて、動きやすさこの上なし。最高のインナーだよ!」
でしょうね。そんな目的で作られた体育着ですもん…という言葉を飲み込みながら、ただ苦笑。
数日後、さらに驚くことが…
「このインナーも、なかなかいいよ」と娘のつぶやきに、不安を覚える母。
胸元を見ると、先日とは違う校章が。あろうことか、四半世紀前の私の体操着を着ていた。
何かのフェチなのか?

新元号「令和」最初の一冊を、最後までお読みいただきありがとうございました。
新しい時代を輝く大人女性のために、有意義な情報をこれからも集めて参ります。
では次回、風鈴の音が涼を呼ぶ季節にお会いしましょう。

 

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