back number, No.28

2018-01-05
百花騒鳴

百花騒鳴

27. おめでたい

今年は「戌年」。愛犬家にとっては、思い入れのある「めでたい年」ではないだろうか。我が家にも、一頭いる。「おめでたい」という言葉が、良く似合う犬である。体格は大柄な成人男性ほど、家族の誰よりもガタイがいい。しかし、本人には全く自覚がない。なんなら、腕に抱えられるくらいの、可愛い仔犬のつもりなのだろう。私が帰宅すると、武器になりそうな大きく太い尾っぽをちぎれそうなほど振り回し、近づいてくる。目の前に来ると、くるりと向きを変え背中を見せる。「背中を撫でて」というリクエストと思いきや、違う。私が彼の後ろにしゃがみ込んでいることを確認すると、何のためらいもなく後ろ向きのまま倒れてくるのだ。100キロ近い物体が倒れてくるのだから、こちらはたまらない。ヨタヨタふらつきながら支えるか、時にはともに倒れて下敷きなってしまうこともある。通り掛かった人の目には、庭で愛犬と寝ている奇妙なオバサンと映ることだろう。けれど、これは彼にとっての、抱っこなのである。ちゃんと受け止め、抱きしめてあげないと、「手を抜かないで。ちゃんと抱いて」と目が訴える。その瞳は、仔犬のようだ。犬もアホなら、飼主もアホである。「可愛いね~、ボクちゃん」といい寒空の下、長らく抱っこしてしまう。このおめでたい犬と飼主のルーティンは、今年もきっと続く。

 

本誌を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

改めまして、新年のお慶び申し上げます。

今年も、変わらぬご愛顧、ご愛読をお願い致します。

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