back number, No.23

2017-03-23
百花騒鳴

百花騒鳴

22 、綾乃

当編集部は、女性たちの汗と涙のたまり場である。「女らしさ」などかなぐり捨てて、貫徹上等と息巻いている。戦場で戦うアマゾネスにとって、「最後の砦」として活躍してくれていたのが、印刷会社の彩乃である。小さな編集部にとって大切な仲間であった。クセのある本紙に、でき得る限りの発色を試みようと、職人さんたちと共に戦ってくれていた。ときには、谷村新司さんの顔色が茶色になってしまいそうになったり…、料理がシズル感のない真っ青になってしまいようになったり…、ピンチをくぐり抜け、百花壇の写真を成長させてくれた。テキストも隅々まで読み込み、事故を防いでくれたこともあった。生一本の彩乃。けれど、靴を脱ぐとタイツに穴があいていることもあったりする。天然なところも魅力。「午前中までは、穴が小さかったんですよ」という不思議な言い訳も可愛らしかった。

そんな私たちにとって大切なパートナーだった彼女は、彼女の人生にとって大切なパートナーを手に入れた。ご主人のことを、「全然タイプじゃないです」というが、彼女は映画「E.T」が好きで、ご主人はE.Tに似ているという。タイプなのだと思う…本当に幸せそうだ。

幸せと希望をいっぱいに抱えて、彼女は私たちの元から去る。この春からは、違う街へ向かう。とても嬉しくて、とても寂しい。喪失感は大きいが、彼女が懸命に育ててくれた百花壇を、しっかりと守っていくことが、彼女への恩返しだと思う。今、彩乃も百花壇も、新しい季節をスタートさせる。

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